わび茶の完成者として知られ、豊臣秀吉に切腹を命じられ、非業の死を遂げた茶聖を題材にした「ディープフィクサー 千利休」を読んだ。関西テレビで放送された連ドラで、私がどハマりした「銭の戦争」を書いた波多野聖の作品。この作品は単なる史実に基づいた小説ではない。本能寺の変で、主君の織田信長を滅ぼした明智光秀が、茶人の千利休に姿を変え、秀吉に軍師として仕えるという奇想天外なストーリー。大胆な設定で、面白さに舌を巻いた。秀吉と利休は協力をして、茶の湯政道により、天下泰平の世を目指す。しかし、淀殿（茶々）との間に鶴松が産まれた秀吉は、後継者となる幼児を溺愛する。秀吉の茶への関心は薄れ、自分が亡き後、鶴松の地位を脅かす存在として、利休＝明智光秀を疎むようになる。秀吉はささいな理由で、利休に切腹を命ずる。しかし、茶の湯に殉じるようにみえた利休は？少し予感もしたが圧巻の結末に唸った。
