願いが叶う旅と本とグルメの開運ブログ(開運の神社飯)

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開運本18「海が見える家」

表紙の美しさに本屋で手に取った連作、はらだみずきという作家の「海が見える家」「海が見える家それから」。主人公の緒方文哉は大学を卒業して入社した会社がブラック企業で1ヶ月で辞める。将来への不安を抱えた文哉に見知らぬ男から電話がかかってきた。しばらく会っていなかった父が死んだというのだ。父は不動産会社を定年前に退職し、千葉県の南房総に引っ越した。館山市内の病院で、文哉はサラリーマン時代の風貌と全く違う亡き父と対面した。文哉は父が複数の別荘の管理人をしながら生計を立て、地域の人々に愛されていたことを知る。サーフィンもしていたという。やがて、文哉は父が南房総の地で第二の人生を始めた真相にたどり着く。これまで知らなかった父の思いに触れた文哉は父の別荘管理の顧客を引き継ぎ、父の友人、和海の助けを借りながら、新規ビジネスも始める。人生の価値観、幸せの尺度は人それぞれであることを教えてくれる作品だ。自然農法を営む偏屈な老人、幸吉の「時間がありさえすれば、いろんなやりようがある。忙しがるやつは、これしか方法がないと思いこみ、たいてい不幸せそうな顔して生きてるもんさ」という言葉は味わい深い。私は、父と息子の物語に涙腺が弱い。自分の亡き父が今の自分の年齢の頃、どんな気持ちを抱いていたのかと思いを馳せることも多い。男の人生とは、父の本当の思いをたどり、生き方を模索する旅路なのかもしれない。 

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